会話だけ切り取ると、やりとりが微妙に噛み合ってないのがわかる。
「さ、最初からわたし、ずっと秋くんが好きだったから……っ、キスじゃない初めては、秋くんがよかった、大事に取ってた、んだもん……っ、うぅ、うえぇぇん」
みっともないくらい、子供みたいな泣き声が出て、客観的に見たらぜったい笑っちゃう光景。
やっぱりオカシー女だって思われるかも。
魔物みたいにオカシくて……
秋くんのことが大好きな……彼女。
「でもキスも、好きな人とキスしたのはね、さっきの秋くんとのが初めて……で、ほんとだよ、」
ためらいがちに伸びてきた秋くんの手が、頭を撫でる。
ラブレター事件のこととかを、1から話して誤解を解こうとしてたのに、やさしい手つきに涙は余計に溢れてきてしまう。
「もーわかった。うららちゃんが俺のこと、ちょっとは好きだってわかったからいーよ。泣くのうざい」
なにも話してないのに、すべてわかったような態度で頭を撫ででくれるのが好き。
事細かく話すのは、あとでもいいって思った。
「泣かないようにキスしてやる。俺のことだけ考えろ」
「う、……キスしなくても、ずっとかんがえてるけど」
「………」
「……あと、キスしたらもっと好きになる、ので困るかも」
「あっそー。じゃあちゃんと“大”好きになれよ」
目の前に影が落ちる。
唇が大事に触れて、秋くんの熱が伝わった。
血液が滾ったような感覚が走り抜けて、痛いくらい心臓に響いた。
鼓動が秋くんに支配されている。
わたしという存在まるごと、ぜんぶ秋くんのものにされた気がした。
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