今度は「チ」と短い舌打ちが降ってくる。
「お前を彼女にしたのは魔が差しただけ」
「魔……? わたしは魔物なの?」
聞き返しても冷たくスルー。
秋くん、いっつもこんな感じだけど、わたしといる時は特に機嫌が悪いように見える。
心をゆるしてくれてるゆえだと思いたいけど、真実は神のみぞ知る──。
「わたしは頭がおかしくて、魔物みたいな……彼女なんだね」
「ああ、そうだな」
「じゃあ……、……わ、別れ、る?」
自分で口にした瞬間、目元がうるっときた。
咄嗟に唇を噛むけれど、ぼたぼたと容赦なく雫が落っこちていく始末。
「お前さ、普段は俺に何言われても泣かないくせに、こーいうとこで自滅するのまじで謎」
がたり。
立ち上がる音。



