そうして数週間後、事故の大元の原因は機材の故障であり、パイロットの対処は妥当だったとの調査結果が発表された。父の疑惑が晴れ、やはりミスではなかったのだと俺は心底安堵した。

 航空関係者の間でも、再発防止のために真実はもちろん周知されていった。ただ、世間で広まってしまった悪いイメージを払拭するのは容易ではない。

 メディアは叩くだけ叩いて、日が経ったら話題にすら上げなくなる。このインシデントの真実も報道したのはごく一部で、それを知らない人たちにとっては父が悪者のまま終わったのだ。

 そして、父は勤務に復帰できるはずだったが、身体検査に引っかかって乗務できなくなってしまった。

 強い人間だと思っていた彼も、ストレスは相当なものだったに違いない。負傷者を出してしまったという罪悪感に加え、世間からの誹謗中傷で神経がすり減っていったのだろう。

 ──インシデントから二カ月後、父は単独で交通事故を起こし亡くなった。身体検査で不適合となって以来、一度も飛行機に乗れないまま。

 いつか一緒に飛行機を飛ばしたいという夢は、叶えられずに消えていった。心に大きな空洞が開き、しばらくはなにも考えられなくて仕事や勉強に没頭した。