「まあ、今日の疲れは俺のせいでもあるかな」
『色々迫っちゃったし?』
「………」
うそ。
ぜんぜん切ないとかじゃない。
『あれ、もしかして意味わかってる?
なら、今日はそれだけで大満足』
しんみりとした空気返して!
あの遥がそんなに悲しい顔するなんてって思って、こっちはめちゃくちゃ反省したのに!
「どうかした?」
なのに遥はクスッと笑って、楽しそうに顔を覗き込んでこようとしてくるから。
っ、顔ちかいっ……!
「っ、危な……っ!」
肩を押して仰け反ったら、落ちそうになって慌てて遥の首に抱きついた。
「はー……心臓とまるかと思った」
『え?もしかして、胡桃から抱きついてくれてる?ツンツンからの不意打ちはやばいって』
「移動する……」
「うん……』
ソファーまではもう少し。
けれど、自分から抱きついてる状況に顔がみるみるうちに赤くなるのがわかって。
「ん。そのままぎゅっとしてくれてていいから」
もうはずかしさが振り切れちゃって、うなずくしかできない。
『耳まで真っ赤。あー……かわいい。かわいすぎ。なんで急にそんなかわいーことすんの?俺のこと殺す気?』
「体勢、つらくない?」
「へ、平気……い、いまこっち見ないで」
「むり、見る」
「っ、み、見ないでってば!」
そう思ってポスンと肩に頭をのせて、擦り寄るようにすれば。
「っ……」
『あー……どうしよ。なにこのかわいい生き物。すっげえかわいい。閉じこめたい。ずっと家にいてほしい。どうしたらこんなに俺のこと、ドキドキできんの?』
口から出る声は淡々としているのに。
心の中は「かわいい」の嵐で。
途中わけのわからないことばもあるけれど、
抱きついているはずかしさよりも、そっちのほうに気をとられてしまう。



