むり、とまんない。

***


「胡桃は座ってて。
俺が作るから」

「あ、あの、私帰……」

「だめ。
帰さない」


「ちょっ、は、遥……っ」


ドアノブにふれた私の手に、じんわりとあたたかい手のひらが重ね合わされる。


「できるまでここにいて」


………なぜ、こんなことに。


あれからスーパーに行って、帰ってきたものの。


『はい、逃げない。それとうしろじゃなくて、隣な。俺と歩くときはぜったい隣』


『ええ……』


渋々……いや、めちゃくちゃ苦労して手は離れたけれど。
とにかく近い遥に、私はとっくにキャパオーバーで。

『に、荷物かして……!』

『だめ。
荷物持つくらいなら、俺の手つないどいて』


『な、なにそれ……遥、だめばっかり……!』

『っ……上目遣いは反則』

『それで怒ってるつもり?かわいいとしか思えないんだけど』(心の声)


……上目遣いしてるつもりはない。

平均的な私でも見上げるほど高いから、どうしてもそうなっちゃうの!


『胡桃はかわいいだけで、俺のそばにいてくれるだけでいい。
俺、胡桃かわいい症候群になってる?』(心の声)


なにバカなこと言ってるの遥……。