むり、とまんない。



『体調、よくなったんだな』

「っ……!」


ドキッとした。

いつの間にか口を覆っていた手は外れて。


私を見る目が一瞬だけど。

ほんの一瞬だけど、やわらかく細められた気がして。


「……体調」


「うっ……えっ!?」


「なに?」
『良かった……一応応えてくれて』


「あっ……いや……、」


やばいやばいやばい。

心の声だけかと思っていたら、急に話し始めるからびっくりして変な声が出てしまった。


「この2日間、高熱だったって、桃華から聞いた」
『なんかテンパってるっぽいけど、応えようとしてくれてるみたいでよかった……』


「そ、そうなんだ……」


いつかのスーパーで聞いた、不安が滲むような声。

『無視されたら……なんて考えたくはなかったけど、ずっと離れてたから、ほんと安心した……』


顔は相変わらず無表情に近い、のに。


心の声は。

いつものクールさを感じさせないような、小さな声。


一方的に避け始めたのは私で、非があるとすれば私のほうなのに。


まさか話すことに、そこまで考えてくれてただなんて。


『熱出した日、ほんとはずっとそばにいたって言いたいけど、急にそんなこと言われても驚くよな……』


驚くも何も、遥が私の部屋にいたとき、ずっと起きてたからぜんぶ知ってる……って、やっぱり夢じゃなかった……。