「じゃあ、ちょっと出てくる。
胡桃のこと、頼んだよ」
「だから言い方」
「はいはい。
胡桃のことになるとすーぐに余裕なくすんだから」
「ほっとけ」
なんの話……?
なんて思っているのも束の間に、パタンと閉まるドア。
あれ……もしかして今、杏部屋出ていった?
取材がどうのって言ってたし。
ってことは今、遥とふたりきり。
『胡桃と部屋でふたりとか、無理』
寄りにもよってあの時の言葉を思い出す始末。
それに……。
私たぶん、とんでもない粗相をしたような気がする……。
倒れる直前。
あのオレンジの香りに抱きとめられて、運ばれたことはうっすら覚えてる。
その時に私、きもちいいやら、もっとやら、はずかしいことバンバン言って……。



