むり、とまんない。



「大丈夫か!?」


焦ったような声のあとで。


「あっつ……どんだけ我慢してたんだよ」


あたたかいはずなのに、どこかひんやりと心地のいい温度がおでこから伝わる。


「……ん、つめたい…きもち」

「っ……」

「もっと……、」


「っ、人の気も知らないで」


目は閉じたまま擦り寄れば、はー……っというため息と、地を這うような低い声。


あ……この、香りは……。


「首に手、まわして……って、聞こえてないか」


レモンとオレンジブロッサムを合わせた爽やかな香り。

そっと両腕を持ち上げられて、引き寄せられる。


「はる、か……?」


「っ、そんな目でこっち見んな。
あー、もう……生殺しかよ、まじで」


なに……?

潤む視界の中で見えたのは、余裕がないというように細められた瞳。


「ん。そのまま、俺に抱きついてて」


その言葉と共に、まぶたを覆い隠されて、目を閉じる。

そして、眠りに落ちる直前。


「────胡桃」


優しく前髪が払われて、ふわりとおでこに何かが落ちてきた気がした。