むり、とまんない。



「相変わらずだな、あいつは」


遥の後ろ姿を見ていた甘利くんだったけど、ゆっくり私のほうへ体を向けた。


「甘利くん、どうして……」


「最後に少しだけ橘と話がしたくて。
いい?」


「最後って……」


その言葉が意味するのは……。

変わらずその顔はクールで淡々としているけれど。

まっすぐなその目を見ていれば、言いたいことはすぐに伝わってきた。


「橘」


「はい」


「俺はずっと橘が好きだった。
保育園ときからずっと、芸能界に入ったのだって、橘とまたこうして会いたかったから」


「はい……」


「今日のパフォーマンス、crownが出るときだけは」


「うん」


「遥のことは考えないで、なにも考えないで。
最初から最後までずっと、俺のことだけ見ててほしい」


「うん」


「いつもはファンに向けてとか、自分のためにするパフォーマンスだけど。でも今日は……」


橘のためにするから。