むり、とまんない。



「敵に塩を送ること、したくないんだけど」


「けど現にここまで連れてきてくれたじゃん」


「……」


ニヤリと笑う甘利くんに、遥は眉をひそめてヤレヤレというようにため息をついた。

そして私の手を放すと、校舎の中へ入っていく。


「俺はもう、胡桃と話すことは話したから。
……胡桃」


その声はいつもの遥じゃない。

私を見つめるまなざしは、今まで見たことないくらい、熱く燃えていた。


それはまさに、アーティストとしての、一人の男の人。


「俺のこと、信じてて」