「メイクまで!?」
「ごめん、あーちゃん」
落ちこむあーちゃんにもう一度謝ってから、制服に着替えて、教室を出る。
たしか、控え室は芸能科の棟にあるって、遥が言ってたっけ……。
「bondとcrownの対決、楽しみだね!」
「ほんっと!
生で歌聞けるとか最高すぎ!」
「ねねっ、どっち投票する!?
やっぱbond!?」
「えー、やっぱりcrownじゃない?」
ふとステージのほうを横切ると、すでに何百人ものお客さんが来ている。
遥たちの影響力って、ほんとすごい。
こんなにたくさんの人たちに囲まれて、歌って、踊って。
私だったらぜったい手も足も震えて、声も出せない。
「ねえねえ、そこのお姉さん!」
「……」
「君だよ君!黒髪の!」
え、私……?



