むり、とまんない。

***


「続いては今女子中高生に大人気のツインボーカルユニット、bondのおふたりです!」


その日の夜。

お風呂から上がってパッとテレビをつければ、音楽番組でちょうどbondが歌っているところだった。


『わかっ、た……』

『ん。ならいい』


『じゃ、じゃあ私は帰るから……!』


『あっ、おい……!?』


あのあとスーパーで。

まだ買い足らないものがあったけど、とにかく今は1人になりたいとダッシュで帰ってきた私。


「夜がふたりを包んで……」


低めだけれど甘さを含んだ遥の声と、心が安らぐような優しい杏の声がハモったバラード曲が流れる。


「はぁー……」


ポタポタと濡れた髪から落ちる雫もそのままに、ソファーに体育座りをして顔をうずめた。


なんで。どうして。


今まで話しかけてくることすらなかったのに。

ばったり出くわした朝だって、あんなに嫌そうにしてたのに。