むり、とまんない。



「買い物行くときは俺に声かけて」


えっ……えっ!?

なっ、なに急に!?


「なあ、聞いてんの?」

「っ!?
き、聞こえてる!」


やばい、動揺しちゃって声が震える……!


しかも急にうしろから覗き込むようにして見てきたから、慌てて距離をとる。


『……俺のこと、そんなに怖い?』

「っ!?」


スっと細められた目に、マスク越しでもわかる、不機嫌な表情。

こ、怖いって……意味がわかんない。


私を嫌いなのはそっちのはずなのに。

それに……。


「こ、声かけてって、仕事、忙しい……」

「いいから」


有無を言わさない声と瞳に言葉が詰まる。


急になに言い出すのとか。

なんで話しかけてきたのとか。
どうしてそんな不機嫌なの、とか。


嫌いな私と買い物なんてなに考えてるの、とか。


言いたいことは山積みなのに。

遥と話してる。

その事実だけで頭がいっぱいいっぱいで。


「わかっ、た……」


とにかく頷くしかできなかった。