むり、とまんない。



「で?
橘も同じってどういうこと?」


「あっ、それは……」


甘利くんの場合は、おそらくどんな人が相手でも聞こえるパターン。


けど、私の場合は……。


「特定の人のしか、聞こえないパターン?」


「……甘利くん、ちょっと離れて話しませんか」

「めんどいから却下」


この距離だと、どうしても心の声が聞こえてしまう。

なんか人に聞かれてるのって変な感じ。


聞かれてる遥も、こんな気持ちだったのかな……。


「遥……?」


「あ……」


心の声が聞こえなくても、たぶん私の反応だけですぐにわかったはず。


「へえ、遥だけ聞こえるんだ」


「う、うん……」


甘利くんの声と纏う空気が、少し冷えた気がする。


「遥と、付き合ってるんだっけ」


「し、知ってたの……?」


「知ってるもなにも、前に教室で彼女だって言ってたし。業界でも有名な話」


あれ、甘利くんにまで聞かれてたんだ……。

というか、本当に有名なんだ私の話……。


嬉しいような、なんか複雑。


「遥はこのこと知ってるの?」


「う、うん、知ってる……」


というか、それでいろいろ紆余曲折しちゃったから……。


「あ、甘利くんは、特定の人だけじゃない?」


「うん。
そうだよ」