むり、とまんない。



本人はイヤホンをしてスマホを見てるけど、ここでさわがれたらぜったいまずいよね。


こんなところでなにしてるのかはわからないけど、女嫌いって聞いたし……。


いくらファンの子たちとはいえ、こんな人が大勢いるところで騒ぎになったら、お店とかいろんな人に迷惑がかかりそうだし……。


「ねっ!
ぜったい本人だって!いこうよ!」


「でもさ、まだ本人って決まったわけじゃないし……」


「もしまちがってたら謝ればいいじゃん!
あたし行ってくる!あ、あの……」


えーい!

もうどうにでもなれ!


「ご、ごめん……っ!
まった?」


「……」


その子たちよりもダッシュで甘利くんに近づいて、肩をポンポンと叩く。


「ごめんね、結構まった?」


「は……」


いきなりマスクをした女が話しかけてきたことに、眉をひそめる甘利くん。


ですよねーーっ!!


私もマスクしてるから気づかないよね!

私!同じクラスの橘!

気づいて!


そう心の中で必死に叫んでいたら、驚いたように目を見開いた。


「え、もしかして別人……?」


その女の子は私の登場に、甘利くん本人だってことを疑いはじめた。


そう!

そのままどこかに行ってください!


「ま、待ってるの疲れたでしょ?
あっちでお茶しよう……?」


お願いだから、合わせて甘利くん!

あなた、周りの女の子たちに気づかれてるよ!


そう思っていたのも束の間に、ふっと顔をあげた甘利くんは。


「……最悪」


ボソッとそう一言つぶやくと。


「あっちいこ」


そう言って私の手を引っ張った。