『胡桃の甘い声も、心も。
ぜんぶ……』
「胡桃」
ビクッ。
低く、でもハチミツみたいな甘い声が、ゆっくり耳に注ぎ込まれる。
「俺は、だれの?」
「っ……」
耳に押し当てられた唇に起き上がろうとしても、握られた両手は布団の上。
「俺のぜんぶは、胡桃の。
胡桃は?」
「『教えて』」
耳に、首に、鎖骨にふれる唇に体が跳ねるけれど、遥が覆いかぶさってきて、反抗できない。
「ほら、胡桃」
「っ、ん、」
「言ってくれたら、とろとろになるまでいっぱい甘やかしてあげるよ」
鼻がぶつかる距離で囁いたあと。
あえて唇にはふれないで。
おでこに、目尻に、頬に。
でもほんとうにしてほしいところに、ほしいものをくれない。



