「胡桃?」


「っ、な、なに?」


「部屋のカギ、もらってきたから。
いこ」


「うん……」


そうは言ったけれど、遥は私の隣に並んで歩くだけ。

遥。

はるか……っ。


「部屋、ここだな」


「……」


ガチャッとカギを開けている遥のうしろ姿。

ふれたい。

ふれてほしい。


遥がすきなの。


「はるか……」


まだ廊下なのに。

もしかしたら人が通るかもしれないのに。


「遥……っ」


その広い背中に手を伸ばして。


「すき……、」


擦り寄るように頭を預けた。


「っ……」


「遥……?」


あれ、今私……。

ピシリと固まって動かない遥に、自分がはしたないように思えてきて、カッと頬が熱くなる。


「ご、ごめん……」


ずっと待たせていたのは自分なのに、自分勝手すぎる。

急に積極的になるなんて、気持ちわるいよね。


「部屋、入ろっか」

「……」


ズキッと痛む胸の痛みをこらえて話しかけるけれど。

なにも言ってくれない……。


未だ固まったままの遥の横を通りすぎて、中に入ろうとした瞬間。


「んっとに……」

「はる……んっ……!?」