『もう少し、がんばれる?』


ぎゅっ。


『ん、いいこ。
ちょっとボタン外すな』


「っ、はぁ……っ」


腰の手はそのままに、髪、頬をなでていた手が、今度はセーラー服の前ボタンを器用に外す。


『胡桃……こっちみて』


遥……っ。


『目、あけてて』


キスをしながら目を開けてるなんて、本当ははずかしくてたまらないのに。


『すきだよ、胡桃。
だいすき』


『今だれにキスされてるかちゃんとみて。
俺だけをみて、俺しか見ないで』


心を揺さぶるほどの、熱を感じる瞳。

何度も囁かれる愛の言葉。


体をすべる手も、声も、遥のすべてが愛おしい。


「失礼しまー……」


「どうしたの?
なに、固まって……」


それからピタリと止んだ声のあとで、バタバタと走っていく音がする。


『もう少し』

『ん、よくがんばったな』


そう言って遥が唇をはなそうとしたところで、今度は私から。


『っ、胡桃……?』


ぎゅっと抱きついた。


「っ〜、はいカーット!!
さいっこうに良かったよ、ふたりとも!」


遠くで監督の声が聞こえたあとで。


「遥、すきだよ……」


遥にしか聞こえないほど小さい声で、想いを伝えた。