むり、とまんない。


“ 橘 ”って……。


甘利くんの声が妙に耳から忘れられなくて、私はその場に立ち尽くしていた。


桃華もいるから、私を名字で呼ぶ人なんて、女の子はもちろん、男子の中でもほとんどいない。


小さい頃からずっと下の名前で呼ばれる度に、はっきり桃華比べられている気がしていやで、本当はずっと名字で呼ばれたがっていた私。


なんで女嫌いなのに、私にはあんな心配って目を向けてきたの?とか。


たまたまかもしれないけど、どうして名字で呼んでくれたの?とか。


いろいろ聞きたいことはあったけれど。



『橘』



どこかでまた、もう一度。

私を呼ぶ甘利くんの声が聞こえた気がした。