「い、いいかげん遅刻しちゃうから……」
もう、いろいろ無理。
耐えられない。
身も心ももたない。
けれど、その広い背中をポンポンと叩いてみても、一向に離れてくれない。
「わかってる」
「わかってるなら、早くはなして……」
「……」
「ね、はる……」
「そんなに離してほしいの?」
「っ……!」
コツンとおでこがぶつかって、交わる瞳が切なく揺れる。
『やっぱ、こんなに好きなの、俺だけ?
ずっとくっついていたいって思うのも俺だけなの?』
「っ……」
いつもクールで余裕なところしか見せないのに。
眉を下げて、悲しそうにほほえむ姿、なんてめったにしないくせに。
だからなおさら。
その顔をさせているのは私なんだと思うと、はずかしいとか、そんな気持ちなんてどこかにいっちゃって。
「そんなの……」
「なに?」
「私だって、離れたく、なんかない……」
できることなら、遥とまだいっしょにいたい。
俯いたままでしか言えなかったけれど、この気持ちだけは伝えたくて、遥のシャツをぎゅっと握る。
まだまだ至らない部分はあるけれど、私だって遥をちゃんと好きなんだよって、遥と同じ気持ちなんだよって伝えたくて。
でも、遥はお仕事、私は学校に行かなきゃだから。
「だから、その分……夜にしたい、の」
ぬあぁぁぁ!!
なにいっちゃってんの、私!!
そんな切ない目で見られたら、今にも顔から火が出そうなほどのはずかしい言葉が、自然とスルスル口からこぼれてくる。
はぁ……。
ほんと、こういうときしか素直になれない自分がつらい。
「……言ったな?」
「へ?」
「言質、とったからな」



