心の声のことも、遥の気持ちも。

何もかもがわからなくて。

杏が帰ってきた瞬間、すぐに家に帰って一晩中泣き続けた。


「おはよ」

「うん……」


『あー……ほんとむり』


「っ……!」


『杏と話してんの、そんなに楽しい?』


次の日の朝。

昨日のは悪い夢だったんじゃないかって思ったけど、杏と話しながら桃華と遥を待ってたら。


おはよう、のあとは口を開いてない。

なのに「むり」って言った。

おまえなんか嫌いだから、杏とも話すなって言いたいの……?


やっぱり、夢じゃなかった……。

途端に胸に切り裂かれたような痛みが走って、目元が熱くなる。


「……っ、ごめん、先いってて」


「え?」

「どうした?」


「も、桃華、まだ来なさそうだし……」


「俺たち待ってるよ?」


「いいから」


「胡桃?どうし……」


「っ、いいからっ!!
先にいっててよ!」