むり、とまんない。

***


「胡桃。帰ろ」

「う、うん……」


「きゃああああ!!」

「一度でいいから言われてみたい!!」


「橘さん、うらやましすぎるっ!!」


たった一言。

授業が終わって、たった一言遥が言っただけなのに、教室がライブ会場へと早変わり。


みんな、遥に聞き耳を立ててる……?

そうじゃなきゃ、こんなにすぐ反応できるわけないし……。


「行こう、胡桃」

「っ……!!」


けれど遥はそんな女の子たちのほうを振り向くこともなく、表情を変えることもなく。


っ、こ、恋人つなぎって……!

私の手をぎゅうっと握って、ただ優しい色の目をして見つめてくる遥。

な、なんかすごく特別扱いされてる気がする……。


『はやくふたりになりたい。
いっぱいキスして、抱きしめて、遥ってよんでもらいたい』


それに心の声も相まって。

っ、頭から湯気が出そう……。

そう思ってたら、頭上でクスッと笑う声が聞こえて、うつむいた。


『かわいい』


すると今度は腰に手が回されて、もう全身から汗が噴き出しそうなほど緊張してしまう。


「は、遥、早く……」

「うん」


教室中のあちこちから感じる熱い視線にいいかげん限界で、なんとか歩きだそうとしたとき。


「ねぇねぇ、遥〜!
今日ヒマ?遊びにいかない?」