***


「じゃ、じゃあ……私とまた話したいから、芸能界に行ったってこと……?」


「そうだよ。
そのためならレッスンだって、嫌いな女たちと話すのだって、なんだって我慢できた」


胡桃とまた、話すことができるなら。


瞬間。


驚きで見開いていた胡桃の目から、大粒の涙がこぼれ落ちた。


「遥……っ」


「なに?」


「っ……どれだけ私のこと、好きなの……っ」


ああ、やっと伝わった。

その言葉に思わず笑みがこぼれた。


「そうだな。
どんなものよりも大きくて重いかな」


「それっ、自分で言っちゃうの……っ」

「うん」


だってほんとだから。


誰にも渡したくない。

ずっと俺の腕の中に閉じ込めておきたい。

俺だけを見ててほしい。


他人の目なんかどうだっていい。


俺は胡桃しか見てないから。

胡桃の視界に映るのだって、今もこれからもずっと、俺だけでいい。


「『胡桃……愛してる』」

「ううっ……も、もう、いいから……っ」


眉を下げて涙をポロポロとこぼしながらも、必死に顔を隠そうとする胡桃が愛おしくてたまらない。


「かわいい」

「っ、だから、やめてって……」


髪をふわふわとなでると、またビクリと肩を震わせて。

あー……めちゃくちゃにやけてる自信しかない。

さっきから頬緩みっぱなし。