「っ……ううっ、、」


ガチャンと扉をしめて、鍵をかけたとたん。

もう限界と言わんばかりに、涙がとまらなくて。

顔を覆って、その場にズルズルとしゃがみ込んだ。


この部屋に越してきたとき、心配性な両親は遥たちにうちの合鍵を渡した。

だから、入ってこようと思えば、私を追いかけてうちに来ることもできたはず。


でも……。


「………」


遥は鋭いから、私の声が震えていたことに気づいていたはず。

遥は優しいから、泣いている私のところに、無理やりくるはずがない。


「はるっ、か……っ」


その優しさに、胸が張り裂けそうなくらいの痛みが全身を駆け抜けて。

コンクリートの玄関に、ぽたぽたといくつものシミを作っていく。


ずっと黙っていたこの秘密がバレてしまった以上、もう遥とふつうに話すことはできない。


接することはできない。


遥のほうだって、自分の心の声がもろばれな相手となんて話したくないに決まってる。


やっと元の、昔みたいに仲のいい幼なじみに戻れていたのに。


また、離れなきゃいけない。

また距離をおかなきゃいけない。


もう、泣き続けるしかできなかった。