むり、とまんない。



「つ、作ってくれたお礼に、洗うよ!」


急いで目を逸らして、お皿を重ねて立ち上がる。


こんなの私じゃないみたい。

遥相手にドギマギして、緊張なんかして。


「いいよ、胡桃は座ってて。
でも俺が戻ってくるまではここにいて?」
『もしかして意識してくれてる?っ、やばい。めちゃくちゃ嬉しい』


「っ……!」


また心臓がドクンと音をたてた。

遥、さっきからどうしちゃったの!?

こんなに笑う遥、見たことない。


これでもかと目を細めて、口許はずっと三日月型。


パスタが美味しかったってほめたから?

今度は私がつくるって、言ったから?

それとも……。


「胡桃はいい子だから、待ってられるよな」

「なっ!子ども扱いしないでっ!」


「はいはい」
『あー……もう、幸せ。すっげえ幸せ。
夢みたいに喜んでる。頬緩みっぱなしだ、俺』


立ち上がって私の正面に立つと、また一段と目をとけさせて。
ふわふわと私の頭をなでてくる遥。


そんな目で見ないで。

頭もポンポンしないで。

そう、思うのに。


「………」


あまりにふわふわとやわらかく笑うから、なにも言えなくなって。


『あー……好きだ、』

「す、き……?」


その心の声に反応してしまったことに、気がつかなかった。