むり、とまんない。

***


「ご、ごちそうさまでした……」

「ん。お粗末さまでした」


それからパパッと作ってくれた遥のメニューは。


「は、遥……こんなオシャレなの作れたんだ」

「べつに大したやつじゃないから」


でも私、こんなの作れないよ……?

ミートソース、なんだけど、カマンベールチーズやトマト、バジルものってて、見た目も味もパーフェクト。

あとは野菜たっぷりのスープもついて。


「な、なんか、お店で食べるやつみたいだった……」

「それは言いすぎ」


なんて言ってクスッと笑う。


『すっげえうれしい。胡桃にいろいろふるまえたらって、練習しといてよかった』


「っ……!」


練習って……。

胸がドキンと音をたてた。


固まる私に遥は、頬づえをついて、この世界のすべての甘さを煮つめたような目をして。

愛おしいと言わんばかりに、じっと見つめてくる。


「っ、わ、私も今度なにか作る……!」

「うん。楽しみにしてる」


っ、なんて顔してるの、遥……。

そんな嬉しいって、これ以上幸せなことなんてないって、喜んでるみたいな。


他の女の子には決して向けない、やわらかい笑顔で見つめられたら。


胸の奥がじわじわと熱をもって。

ドキドキ、するしかない。