「……それでも一回くらい、応援に来てくれてもよかったのに。俺、2年の時からレギュラーだったから、けっこう大会に出てたんだよ」
「え、そうだったの? いやいや、それでもさー高校生になってまでレイのいるバスケ部の応援に来るとかさ、レイの保護者か? って感じじゃん。私、大学生だし」
「……保護者じゃねーし」
「えっ? なに」
「……なんでもねぇ。俺、チケット買ってくるわ。ちょっと待ってて」
「あ、うん」
券売機まで駆け足で向かうその後ろ姿は、いつのまにか、大きい。少しだけ、私の知らない雰囲気だった。
「はい、チケット」
もどってきたレイは私にチケットを差し出した。
「あ、ありがとう。800円だっけ?」
私が財布を取り出そうとすると、レイが手を出して阻止する。
「いいよ、このくらい。バイト代入ったし」
「いやいや、お姉さんにかっこつけるんじゃないよ。ほら」
「だから! いらないって! ほら、行くよ!」
「そう、じゃあ今度なんかおごるね」
「いいって。それよりほら、こっち!」



