「あのさ、それって保育園とか小学低学年とかのときの話でしょ? アヤちゃんが2つ上なんだから、俺が勝てなくて当たり前なんだけど」

「そっか……それじゃしょうがないか」

「っていうか俺、アヤちゃんが思ってるより運動できるからね」

「いやいや、絶対できるほうじゃないから!」

「いや、知らないでしょ! 部活とか見に来てくれたことないし。」

「そういえば、見たことないかも。レイが中学でバスケはじめたころ、私は最後の大会に向けて追い込んでたし。夏の大会が終わったら部活引退して、受験勉強だったからねー……そもそも、グラウンドでテニスしてたら体育館のバスケ部とか目に入らないし」

「目に入らないとか酷いんだけど!」

「だって本当のことだし。目に入らないというか、眼中にない?」

「もっと悪いから!」


 やっぱり、レイと一緒にいるのはラクだ。
 わざわざ話題を考えなくても、いくらでも会話は弾むし、自然でいられる気がする。

 そういえばレイと2人で出かけるなんて、何年ぶりだろう。まぁ、家から高校まではほとんど毎日一緒に行っているので、今さら何も思うところはないけども。

 それでも、お互いに私服で並んで歩いているこの状況は、ちょっとだけ新鮮だ。

バスケをはじめた頃からどんどんと伸びた身長は、私が高校生になるころにはすっかりと抜かされてしまっていた。今でも時々、あんなに小さかったレイを見上げていることを、不思議に感じる瞬間がある。