おにごっこでは私を捕まえられずに泣くし、かくれんぼでは私にすぐ見つかって泣く。

 手加減というものを知らない当時の私は、何をするときも全力でレイを倒しにかかっていたため、一時期は、一緒に遊んでくれなくなったほどだった。

 家が近所で両親の仲が良かったこともあって、私たちは、きょうだいのように育った。

 お互いの家に預けられることもあったし、週末には2家族で出かけることもあった。たしか、一緒にこの動物園に来たこともある気がする。レイはまだ小さかったので、覚えていないだろうけど……。

 レイは子どものころから、誰にでも懐っこい性格でたくさんの人から可愛がられていた。
 保育園のころには友だちや保育士の先生、友だちのママにいたるまで、屈託のない笑顔と「だいすき」のコンボ攻撃にあてられてみんなメロメロになってしまうのだ。

 ……いわゆる、天性の人たらしというやつだろう。

 そんな私も、「だいすき攻撃」に心を奪われた時期があった。

 一緒に遊んで、レイが泣き出してしまうと、いつものことながら、時には少しだけ悪いことをした気になってしまう。そんな時は、しゃがみこんで泣くレイの左手をそっとにぎりながら「大丈夫だよ」と声をかける。

 するとレイは決まって、「アヤちゃん大好き!」と抱き着いてくるのだ。
 これをされて、キュンとしない女はいないんじゃないかと思うくらい、破壊力抜群の笑顔と一緒に。