さようなら、同い年のあなた

おずおずと加えられたつけ足しを笑い飛ばす。


「五年経ったって、何年経ったって、あなたがいいに決まってるでしょ」

「そう?」

「そうだよ」


待っててくれてありがとう。


うん、とも、ううん、ともつかない相槌を絞り出した彼に、きゅうと手を握られた。


「おはよう。起きてくれて、よかった」

「おはよう、こんにちは、こんばんは。もちろん起きるに決まってるじゃない」

「なあに、その、おはようこんにちはこんばんはって」

「ここ、時計もないんだもの。今が何時かわからないから、全部並べてるの」


意地悪な誰かさんったら、全然教えてくれないし。わたしがいろいろショックを受けるかもしれないから、ヒントになりそうなものをなるべく外したんでしょう。


「うっ、すみません」

「おかげさまでまだ夏も来てないのに寒々しいよ。あのね。こういうときはね、おかえりって言えばいいの」

「そっか。……おかえり」

「ただいま」


これからもよろしくね、と手を出すと、うん、よろしくね、と記憶より少し皮膚の薄くなった手が重なった。


その薬指は、あいている。