さようなら、同い年のあなた

「看護師さん、来ませんね。お忙しいんでしょうかねえ」


わたしの言葉を遮るようだった。話を逸らそうとしているのなんて、丸わかりだ。


「いつもこの時間に定期的に来てくださるんですか?」

「そうですね」

「じゃあ、あなたとわたしがちゃんとお話するために、待っててくれてるんじゃないですか」


知らないけど。


にこりと笑った。話を逸らさせやしない。


「ありがたいことです」

「そうでしょうか」

「そうですよ。……ねえ、お名前、当ててみせましょうか」

「残念ながら俺、ルンペルシュティルツヒェンじゃないよ」

「そんなの見れば分かります」


もう、こんなときまでふざけるんだから。


ため息を吐いて、恋人の名前を呼ぶ。彼の目が見開いて、涙がにじんで、唇が震えた。


「そうでしょう?」

「……ばれちゃった?」

「ばれるよ。全然変わってないんだもん」

「ほんとに? 変わってない?」

「変わってない変わってない。ああもう、相変わらず泣き虫ねえ」


それで、今は何年なの。


答えは、わたしが覚えている限りから、五年後だった。