私を赤く染めるのは



“ありがとう。ゆづちゃんもいい日になりますように”

ハチから返事をもらえただけで今日は間違いなくいい日だ。


この先どんなに辛いことがあってもハチからの言葉を見返せば力が湧いてくる。


推し最っ高!!!ほんと神!!


ハチのことで頭がいっぱいだった私が兄からの連絡を思い出したのはマンションの前に着いた後だった。



ピッ。


入口のセキュリティを慣れた手付きで解除する。

すると見るからに重厚そうな扉がウィーンと音を立て開いた。

エントランスには眩しいくらいのシャンデリア。

これだけは未だに慣れない。

ここは本来なら普通の女子高生が住むようなマンションではないだろう。

高級住宅街の中でも特にセキュリティ面で高い評価を誇るこのマンションは人生の勝ち組と呼ばれているような人達が多く住んでいる。



私がここに住むようになったのは高校に入学する少し前。

父の転勤が決まった時だった。


高校の入学が決まっていた私とすでに就職していたお兄ちゃん。

母は父について行くことが決まり、私とお兄ちゃんは2人で暮らすことになった。

お兄ちゃんは仕事柄(ゲーム会社)家を留守にすることも多く、夜一人で過ごす私を心配した両親とお兄ちゃんが貯金を切り崩しこのマンションの一室を用意してくれたのだ。