「あ、でも煌」
本当は落選のことなんて考えたくもないけれど……。
「何?」
「もし、私が落選した時は、」
「落選した時は?」
「ハチのレポは頼むね!」
「誰がそんなことやるかよ」
……やっぱりだめか。
冗談混じりのお願いを秒でつき返されて、顔を見合わせながら笑う。
……こんな時間もあとの残り僅か。
「あ、そうだ煌、煌が申し込みのところ押してよ」
ようやく拾い上げたスマホの画面は希望日の選択ページで止まったまま。
第一希望、第二希望、それぞれ選択して確認をタップする。
「それ何か意味あんの」
「なんかご利益ありそう。お願い」
そう言い手を合わせると「……責任は取らないからな」と口にした煌が、申し込みと書かれた部分をタップした。
すると画面は切り替わり“申し込みが完了しました”の表示が出る。
それとほぼ同時に確認のメールが届いた。
「会場で会おうね煌」
「その発言も落選のフラグ立ってんだよな」
「だ、大丈夫だよ。煌が申し込んでくれたんだし」
あとは当選を祈るのみ。
スマホを握り念を送っていると、ヴーヴーと手に振動が伝わってきた。
ディスプレイには朱莉と表示されていて、何も考えず受話器のマークをスライドする。



