碧人くんが煌のことをどこまで知っているのかは不明だが、少なくとも煌は碧人くんのことを知らないはず。
お互いを紹介してどうにかこの間を保たせよう。
「煌、こちら碧人くん。お兄ちゃんの中学からの友達で私も昔からお世話になってるんだ。今は私が通う高校の先生なの」
「どうも、橘碧人です」
私の紹介に軽く会釈をする碧人くん。
「先生?」
そう、実は碧人くんは今うちの高校の教員として働いている。
夏休みに入るまでは毎日のように顔を合わせていた関係だ。
「うん。で、碧人くん見てわかると思うけど、Bijouの煌」
「一色です」
煌も軽く頭を下げるが、その顔はどこか不機嫌そうだ。
そりゃ、そうだよね。さっき押し倒しちゃったばっかりだし。
あとでもう一度、きちんと謝ろう。
とりあえず挨拶は済ませたし、本題はここから。
「碧人くんは煌がうちにいることをいつから知ってたの?」
「紫月がマネージャーを始めるちょっと前?」
ということは、私が知るよりももっと前だ。
「そんな前から?」
お兄ちゃんは碧人くんに転職の相談でもしてたのだろうか?
「俺も誘われてたから」
「誘われてたって何、同居?」
「ちげーよ。紫月が今いる会社」
ん……?それじゃあ、碧人くんもMiraiに入社していたかもしれないってこと?
「どうして断っちゃったの?」
正直、碧人くんはお兄ちゃんよりも何倍も頭の出来が良い。



