「おい、俺まだ靴も脱いでないんだけど」
「いいから早く」
とりあえず煌には部屋に隠れてもらおう。
えーっと、靴はお兄ちゃんのものってことにして出したままでもいいのかな?
……だめだ、お兄ちゃんはこんなおしゃれな靴は履かない。
まずは靴を靴箱にしまって、煌には部屋から出てこないよう伝える。
その後、帰宅したお兄ちゃんにこっそり事情を話そう。
頭の中で作戦をまとめ、煌の後をついて行こうとした時、「なぁ、」と振り返った煌に躓き、思いっきり突き飛ばしてしまった。
「いって……」
「ご、ごめん。大丈夫?煌」
体勢を崩した煌はそのまま後ろに倒れ込み、私はなぜか煌の上に馬乗りのような形になっている。
「け、怪我してない?どうしよう、Bijouの煌に怪我させたら私」
「大丈夫だから落ち着けよ、それよりお前は?」
私が鈍臭いせいで起きた事故なのに、煌はそんな優しい言葉をかけてくれる。
「私は大丈夫」
「ってか結月ドア開いたまま……」
どうやら煌を慌てて押し込もうとした時に蹴り飛ばした靴が、ストッパー代わりになってドアを止めていたようだ。
「あっ、わ、私が閉めてくるね」
その場から立ち上がろうとした瞬間、今度は別の誰かがドアを開けた。
「おいおい不用心だな」
その声にパッと後ろを振り向く。



