私を赤く染めるのは



「煌、起きてー」

今日も普段と変わらない一日がスタートする。


煌は相変わらず多忙を極めていて、丸1日一緒に過ごしたことはまだ一度もない。


食事を作り置きしておくと煌とお兄ちゃんが食べてくれる。

それを見てまた食事を用意する。

時々、煌と一緒にBijouのメンバーが出てるバラエティーなんかを観て笑い合う。



そんな日々の繰り返しで、気づけばもう8月も半ばに差しかかっていた。


煌が出ていくまであと半月。





「朝からご機嫌だな」

昨夜も遅くまで収録だった煌がコーヒー片手に定位置へと着く。

「手作りチャームの注文がきたの。Bijouのために稼がなきゃ」

推し活にはお金がかかる。

私はフリマサイトで手作りのアクセサリーやチャームを売り、それを軍資金の足しにしている。



「そりゃどーも」


「今日も夜まで仕事だよね?」

「雑誌の取材と特番のゲスト。早くて19時頃かな。晩飯は一緒に食べられると思う」


「わかった。夕食は何かリクエストある?」


「んー鍋食べたい。キムチ鍋」

「おっけー」

「ゆづ〜。煌ばっかりじゃなくて、俺のリクエストも聞いてよ」

同じく昨夜まで仕事だったお兄ちゃんがパジャマ姿のままリビングへと顔を出す。



「べ、別に煌のリクエストを優先してるわけじゃないから……!そうだ、朝はお兄ちゃんが食べたいって言ってた炊き込みご飯とお吸い物に魚も焼いたよ。ほら、早く顔洗ってきて。1時間後には出発するんでしょう」

「はーい」

支度を終えた煌、お兄ちゃんと一緒に食卓を囲む。

他愛のない話をしながら11時30分、2人を送り出した。