私を赤く染めるのは



今日は朝から掃除と昼食の準備を済ませて煌とお兄ちゃんの帰りを待つ。


昨日《昼過ぎには帰る》ってお兄ちゃんから連絡がきてたから、もう帰って来てもおかしくはないんだけど。

あと10分で14時になる。

2人とも遅いなー……。


ロケの間、煌がSNSを更新したのはたった一回。

ロケ地の滝をアップしたものだった。

《綺麗な滝ですね》

《煌も写った写真が見たい!》

《煌くんもしかして撮影中なのかな?》


私は他のファンが送るコメントを見るだけで、何も言葉を残せなかった。


ちょっとはハチの更新度を見習ってよ。

そんなことを思っていると静寂の中、ピッと鍵を解除する音が鳴り響いた。

私は無意識のうちに玄関へと駆け出す。

「お、おかえり!」

「ゆづただいま」

お兄ちゃんが煌を押し入れるような形で家に入る。

「紫月さん。いつまでそのスタイル貫くんですか」

「どこで誰が見てるかわからないだろ」

「流石にマンションの中まで追ってこないって」

「いや俺にはマネージャーとして煌を守る使命があるんだ!」

アイドルとマネージャーの一般的なやり取り(?)かどうかはさておき、1週間ぶりの2人の会話に自然と口元が緩む。

「俺に会えて嬉しそうだな」

「そ、そんなことないもん」

「一人で寂しくなかった?」

「こ、これっぽっちも。私にはハチがいるから」

「ふーん。俺は結月と会えなくて寂しかったけど」