「……団扇が何か?」


煌が持っているのは昨年あったコンサートで使用した手作りの団扇。

蛍光シールで作ったハチの文字とメンバカラーであるイエローを基調とした飾り、裏にはハートマーク作って♡の文字。

……こういう場面でまじまじと見られると恥ずかしい。

「お前もしかして……、@yuzu_8▲▲vのゆづか?」


団扇を手にしたまま煌がそうつぶやく。

@yuzu_8▲▲vは私が趣味垢として使用しているSNSのアカウント名。


だけど、どうして煌がそのアカウントのことを知っているのだろう。

「なんでそれ……そうですけど」


「エゴサしてるとよく出てくるんだよ、この団扇のアイコン」

そう言うと煌は団扇の表面を指差した。


芸能人もエゴサするって本当なんだ。

って、そうじゃなくて!

そうだ……!確かに私はその団扇の写真をアイコンとして使用している。

……さっきまで煌の態度にイライラしていたけれど、団扇で認知されていたことは正直ちょっと嬉しい。

自分のファンだと思ってファンサービスしてくれたみたいだし、煌って案外ファン想い?

はっ……!煌がエゴサでこの団扇を認識してくれてたってことは、もしかしてハチも?


「ハチばっかり褒めてる痛ぇアカウント。あ、先に言っとくけどハチはエゴサとかしないから」

……やっぱ、訂正!

一言……いや二言多い!!



「てか、一体何の用ですか」

わざわざ私の部屋に来たのには何か理由がある訳で……。

とっとと話を聞いて自分の部屋に帰ってもらおう。