「ハチのファン……ですけど?」

「じゃあ最初からそう言えよ」

なぜか怒られる私。

ていうか、さっきまでと態度が違うような……。



「無駄な時間使っちまった」


煌はそう言うと私の許可も取らず勝手に椅子へと腰掛ける。


「む、無駄な時間って?」


「ファンサービス。……やたらと顔赤くするから俺のファンだと思うだろ?普通」


えっ、私赤くなってたの!?

ま、まぁ?推しじゃなくても推しグループではあるんだからそりゃあ緊張はするし、照れることだってあるでしょうよ。

それを勝手に自分のファンだと勘違いして不機嫌になるなんて、それって何か……。


「自意識過剰じゃない……?」

思わず本音が零れる。

「なんか言ったか?」

「い、いえ何も。それよりもさっきとはえらく態度が違いますね」

「そりゃー。ここまできて追い出されたら困るからな。泊まらせてくれる女の子はいっぱいいるけど、いちいち週刊誌に追ってこられたら面倒だし」

それって、つまり……。

「……猫を被ってたってことですか?」

そして、私はそんな煌にまんまと騙されたわけだ。

しかも、泊まらせてくれる女の子って。

アイドルからそんな生々しい言葉を聞きたくなかった。

「別に猫被ったつもりなんてねぇよ。そっちが簡単に絆されただけだろ?」


「なっ!」

いくらなんでも好き勝手言い過ぎでしょう?

何が俺様Sっ気よ。これじゃただの自己中男じゃない。

煌の態度に怒りを感じる私とそんなことを1ミリも気にしていない様子の煌。


「つーかこの団扇」

今度は棚の上に飾ってあった団扇を勝手に触られる。