リビングには再び煌と2人きりの時間が流れる。
「部屋案内しますね」
その空気に耐えられず、私はお兄ちゃんに言われたとおり煌を空いている部屋へと案内した。
「自由に使って下さい。何かあったら兄か私に声かけて下さいね」
「ありがとう」
煌が部屋に入った後、私はリビングのDVDとタオル、ペンライトを回収し自分の部屋へと戻った。
ガチャ—。
持っていたものを全て机の上に起き、頭からベットに倒れ込む。
「煌と同居って……信じられない」
自分の部屋に戻れば冷静になれるかも。
そう考えていたが、やっぱり無理。
今日から煌と同じ家で同じ空気を吸うの?
何その贅沢な生活。
もう空気清浄機なんていらないんじゃ?
「朱莉に電話……!しても信じてもらえないか」
いや、言っちゃだめなのかな?
朱莉が誰かに言うとは思わないけど、私が勝手に判断していいことじゃないよね。
……初めて親友の朱莉に秘密を抱いてしまった。
「はぁー」
枕に顔うずめ、大きなため息を漏らす。
少し頭を休ませよう。そう思った時、静かな部屋にコンコンとノックの音が響いた。
「はー」
ガチャ—。
「はーい」そう返事をするよりも先に開くドア。
「ちょ、お兄ちゃんノックと同時に開けないでってあれほどー」
文句を言いながら、渋々顔を上げるとそこに立っていたのはお兄ちゃんではなく煌だった。
「……煌……くん」
煌は私の部屋に足を踏み入れると無言で辺りを見渡す。
そして、今度は私を見つめるとため息混じりにこう言った。
「なんだ。ハチのファンかよ」
とても不機嫌そうな顔で。



