私を赤く染めるのは



「ごめん。急で驚いたよね?やっぱり俺と同居なんて嫌?」

煌はまるで捨てられた子犬のような目でこちらを見てくる。

いつもの様子とは違いやけに大人しい。


そりゃそうか。

煌だっていきなり同居の話なんか持ちかけられて混乱したよね。

それなのに私ってば自分のことばかり考えていた。


「あの煌……くんが悪いとかじゃなくて。私が煌くんと一緒に住むなんて緊張しちゃうと言いますか……」

「そうだよね。知らない人間が急に押しかけてきたら気を遣うよね。俺もう一度事務所の人と話してみるよ。ファンの子に迷惑はかけられないし」

普段、強気な煌が私の言葉一つで弱気になる。

……きっと、皆と離れ離れになって不安なんだ。


私がこのまま同居を断ったら、煌はどこで生活するんだろう?

事務所はホテルを用意してくれるかもしれない。

でも、そこはここよりも安全?

うちならお兄ちゃんもいるし……。


それに、いつもBijouから元気を貰ってるのに私は何も返せないの?

私に今できるのはこの同居を受け入れることなんじゃないの?



「あ…あの!こ、ここにいて下さい!煌……くんがうちでいいのなら」

よし、煌が安心してBijouの活動に力を注げるよう私はこのうちで無になることを決めた!


「噂通り……チョロ」

「へ?」

煌が何かを言ったような気がしたが本人は何でもないよと微笑む。

え、笑顔が眩しい。

「今日からよろしくね、結月ちゃん」


そう言うと煌はそっと右手を差し出した。

え、何この手?握るの?掴むの?


ちょっと待って、その前に今私の名前呼んだよね?

“結月ちゃん”って。