「俺がその子に興味を持ってないことがわかったら嫌がらせは終わると思ったから。予想どおり上手く行ったよ。だけど、俺はその子を傷つけて謝れないままその子は転校していった」

「じゃあ、あの元クラスメイトAって……」

その傷つけられた女の子が記者に話したってこと……?

「それは違う。そういうことするような奴じゃないし、多分周りにいた誰かだと思う。曖昧なところがあったから」

「じゃあ、どうして事務所は否定しないの?」

「全部が本当って訳じゃないけど、嘘だとも言えない。傷つけたのは事実だし。だから否定のコメントは出さなくていいって隆也くんにそう伝えた」

煌が自分で決めたことなんだ。

「そうだったんだね。だけど、どうして私に話してくれたの?」

「結月には知っててほしかったから。俺がお前の気持ちに答えられなかった理由」

「え……?」


ピピピピッ、ピピピピッ。

煌のスマホから2分55秒が経ったことを知らせるタイマーが鳴り響く。


「……………」

まだ何かを言いたそうな煌。


静かな部屋にタイマーの音だけが鳴り続ける。

私は煌の代わりにそのタイマーを停止すると新たに10秒セットした。



「しょうがないな……アイドル結月は本来忙しいんだけど10秒だけ延長してあげる」

「何だその設定」


「う、うるさいな!元はといえば煌が始めたことでしょ。あと握手会の極意知らないの?大切なことは一番はじめに伝えるんだよ。じゃあいくね、よーいスタート」


再び動き出すタイマー、


9

8

7

6

5

4



「結月のことが好きだ」


その言葉の直後、再びタイマーの音が鳴り響いた。