「でも、それって悪いのはそのアイドルでしょ?」
勝手に人のものを盗もうとするなんて決して許される行為ではない。
そのアイドルは昨日も普通にテレビ出演をしていて、なぜ煌だけが悪者扱いされるのだろう。
「まぁ、そうなんだけど。未遂で終わったし高額なものじゃなかったから話し合いの上、大事にはしないことになった。相手は大手事務所の人気アイドルだしな」
そう言うと煌は「まぁ、華やかな世界には色々あるんだよ」そう言って自虐的に笑う。
正直、それで煌が犠牲になるのは納得がいかない。
でも、大袈裟にはしたくない。その言葉には一吹のことも考えられていると思うと私は何も言えなかった。
それならば、あのバレンタイン話は?
チョコレートをゴミ箱に捨てたという話。
「中学の頃の話も事実とは違うの?」
「あれは……前にさ本読み付き合ってもらったこと覚えてる?」
「もちろん、覚えてるよ」
煌がうちに来てすぐのこと。
『キミカラ』の練習を付き合った。
「あの時、好きだからこそ身を引くって話しただろ。あれ昔の俺も感じたことなんだ」
「え?」
「中2の頃、好きな子がいた。その子も俺のことを好いてくれてるって感じてて……。バレンタインのチョコが欲しいって言ったんだ」
「……そうなんだ」
雑誌やテレビでも聞いたことがない。
初めて聞く煌の恋愛の話。
「ああ、バレンタインの日になったら付き合うのかなとか完全に浮かれてて、気づいてなかったんだ俺。その子が俺を好きだって言う女子達からいじめられてたことに
」
「…………そんなことがあったんだ」
「それで約束どおりその子はチョコを作ってきてくれたんだけど、俺は皆が見てる前でその子からのチョコをゴミ箱に捨てた」
「……え、どうして?」



