「橘様ですね、お待ちしておりました。お席にご案内致します」
店員さんはにっこりと微笑むと、私達を空いてる席へと案内してくれた。
「碧人くん予約してくれてたの?」
「ネットで調べたらこの時間は混み合うって書いてあったから」
「そうなの!?知らなかった。私もサイトは見たんだけどメニューばっかり気にしてた……予約してくれてありがとう」
碧人くんがモテるのはビジュアルだけでなく、こういった気配りができるところも関係しているのだろう。
それに引き換え私はメニューに気を取られて予約のことなんて一切考えていなかった。
経験というよりも人としての差かな……。
席に着いた私達はメニューを手に取る。
そこには20種類以上のパンケーキが載っていて、私は苺をふんだんに使ったもの。碧人くんは私が苺と迷っていたチョコレートの方を頼んでくれた。
15分後、運ばれてきたパンケーキをシェアして食べる。
「ん〜美味しいね」
「もっと重いのかと思ったらそうでもないな」
甘いものが苦手な方にもおすすめです。
そう書かれていたチョコレートのパンケーキ。
私はそれを口に運びながら、これなら甘いものが苦手な煌でも食べられそう。そう思った。
そんなことを考えても無駄なのに……。
煌が何かを楽しむとき、その隣にいるのは私じゃない。そんな当たり前なことに今更気づいて落ち込むなんて馬鹿らしい。



