「結衣―――」
「だって、ちょっとだけ返事が遅れたじゃん……」
「え?」
「離れないって言ったけど、ちょっと間が空いたもん」
拗ねたときと同じ声を出す結衣。
高校生になった結衣はすっかりそんな声を出すこともなくなっていた。
ツンとすました態度を取るのが普通になっている今、不安さと甘えを混ぜた声が懐かしく感じる。
どうしていもうとはこんなにも可愛いのか。
「自分と戦っていただけで迷いがあったわけじゃないんだよ。気にしないで」
「自分と戦う……?なんで……?」
「……結衣が可愛すぎるから。とりあえず早く離れようか」
そろそろほんとに限界なんだよ。
結衣のお気に入りの匂いかつ俺も好きな匂いが香ってきてなおさら俺の欲情を煽ってくる。
理性が失われかけている中、ぽろっと思っていることまで言ってしまった。
今日はやめておこう。想いを伝えるのはまた今度。
そう決めていたのに気が緩んで想いが零れてしまいそうだ。
うちのいもうとは可愛くも恐ろしい子。それを改めて認識する。



