「ん……」


アルバムがぎっしり詰まった本棚を眺めていると、結衣が気の抜けた声を出しながら目を開いた。

寝ぼけているのか焦点が定まっていない視線を宙に漂わせている。可愛い。

写真と動画に収めておきたい。むしろ独り占めしたい。
いっそこの部屋に閉じ込めておきたい。


「結衣、まだ夜になったばかりだし眠ってていいよ」

「……ここ、どこ?」

「僕の部屋だよ。結衣が眠ってるのを邪魔したくなかったから、灯りは常夜灯だけにしてたんだ。暗い部屋で急に僕の声が聞こえてきて、びっくりした?」

「ううん。そんなことよりも、おにいちゃんがいないのかと思ってびっくりしちゃった……」


びっくりしちゃったのはこっちだよ。
なんでそんなに可愛いことを言うのかな?

結衣の切なそうな声に僕の思考は酷くかき乱され、理性を奪われそうになる。

わずかな灯りしかない二人きりの部屋であんまり可愛いことを言うのは良くない。

身をもって教えてあげるべきだろうか。