『ねぇ、なんで手も繋いでくれないの?』


結衣以外の女に触りたくないから。


『前に遊園地の方が好きだって話をしたよね。どうして水族館に連れてきたの?』


結衣は遊園地より水族館の方が好きだから。


『いつも夕方で解散するのはどうして?』


早く帰って、結衣と家族団らんの時間を過ごさなきゃいけないから。

なんて、さすがにそんな正直なことは言わずに微笑みと適当な誤魔化しでその場を乗り切るけれど。

いろんな女と付き合ってみても、結衣以外の女には少しの愛情も抱けなかった。


それでも僕が懲りずに興味のない女たちと付き合うのは、女心を知るため。
正確には女の子である結衣の心を知るため。

いつか僕の願いが叶ったときに結衣を幸せにできるように、何度も何度もシミュレーションを行う。

彼女たちはあくまでも実験体であり、僕に利用されるだけの存在なのだ。


『もう無理!妹のことばっかり話しててうんざりだし、完璧すぎるデートにも飽きた!』


キレながら別れを告げる女たちはみんな同じようなセリフを吐いて僕に背中を向ける。

引き止める理由もないから僕も背中を向けて歩き出すのだけど、背中にさらなる文句を投げられたこともあった。

ちょっとよくわからない。