「家に着くまで寝てるといいよ。おやすみ」


眠気を誘う穏やかな声がわたしの意識を深いところへと落としていく。

おにいちゃんの腕の中で感じる安心感と心地よさに自然とまぶたが下りた。


おにいちゃんの幸せのために、彼女からふられる理由をもっと考えなきゃいけない。
いつまでもおにいちゃんに甘えていたらいけない。

そうわかっていても薄れゆく意識。


「うん。……おにいちゃん、だいすき」


朧げな意識の中、無意識に零れ出たわたしの気持ち。
これまでもこれからも秘密にするつもりだった特別な想い。

それに反応してわたしを抱く腕にわずかに力が込められた。
そして……


「俺も大好きだよ。結衣はずっと俺のものだからね……」


ぞくりとするような……それでいて胸がいっぱいになる言葉が降ってきて。


……おでこに柔らかな愛を落とされた気がした。