一番初めは大好きな人と。ラブラブデートの帰り道にいい感じの雰囲気の中で。

キスの後の余韻にも浸って。照れながら笑い合う。

そんな理想のファーストキスを思い描いていたのに。

それがこんな、顔はそこそこのストーカーにわたしの写真で囲まれた空間で無理やりなんてありえない。
今すぐにでも人生をやり直したい。

そう思っているのに……


「結衣……愛してるよ」


一方通行の重い愛をキスの合間に告げられる。

キスを拒否するために顔を背けようにも捕らわれていてそれも叶わない。わたしはどんどん汚されていく。

こんなわたしじゃもうおにいちゃんに会えない。汚れたわたしはおにいちゃんに嫌われちゃう……。


「あぁ、やっと俺のものだって認めてくれるんだな……嬉しいよ」


力の抜けたわたしを満足そうに見つめ、調子に乗ったストーカーは肌が見える箇所すべてにキスを落としていく。

小さな痛みと共に次々と咲いていく赤い花。肌にかかる生温かな吐息。

それらがわたしの気力を少しずつ削り取っていく。


そんな中、脳裏に浮かぶのはたった一人の大好きなおにいちゃん。


昔からずっと好きで手に入らない、お義兄ちゃんのことだけだ。