生徒はそう言いながらその場に崩れ落ちる。教師は「みんなはここにいるんだよ」と強く言い、井戸へと向かう。

この学校には、もう今は使われることはないが井戸が中庭に存在する。教師が慎重に井戸に近付き、中を覗き込むと、異臭が鼻をついた。

枯れ果てた井戸の中で、まだ十二歳の少女が生き絶えている。その表情は恐怖から歪んでおり、全身は獣に襲われたような噛み跡や爪で引っ掻かれた跡があった。その小さな体は赤く染まり、腐敗が始まっている。

「なんてことだ……！」

この失踪、そして惨殺事件の犯人は、警察がいくら捜査しても見つからないまま、いつも時間だけが過ぎていく。



以前はこの場所は、立派に栄えた城だったのだろう。今では蜘蛛があちこちに巣を作り、埃がたまり、廃墟となっている。

「こんな不気味な場所、わざわざ夜中に来なくてもいいのに……。昼間の方がまだ怖くないでしょ？」

恐怖を紛らわすため、イヅナ・クリアウォーターは片方の手で薙刀を握り締める。もう片方は制服であるミニ丈の袴を掴んでいた。

月明かりがぼんやりと城を照らし、それを見上げているイヅナの胸元も照らされる。その胸元には、アレス騎士団の団員である証の羽をモチーフにしたバッジがつけられていた。